年収上限を引き上げたAmazonには、人材流出の抑制以外にも狙いがありました。

年収上限を大幅に引き上げた米Amazonの狙い

上限額のアップ

 

アメリカのアマゾンこと「Amazon.com」は、2022年に米国内の基本給の上限を年35万ドルに引き上げました。

 

従来の2.2倍が上限になる大幅な引き上げで、日本円で年収約4,500万円を目指せることになります。(1ドル130円換算)

 

年収上限を大幅に引き上げた米Amazonの狙いは、人材流出の抑制と優秀な人材の確保です。

 

株式による報酬の魅力が低下

運送料が値上げする様子

 

アマゾンは従来から株式の報酬を用意することで基本給を抑えてきました。
日本で言う「従業員持ち株制度」は会社が成長をしていて、株価の上昇が見込める状況ほどメリットが大きいです。

 

これまでは順調に成長してきたため問題ありませんでしたが、2021年のアマゾン株は上昇率が2.4%に鈍化しました。
株価の上昇率が鈍化したのは物流コストが上がったことが大きく関係しています。

 

地政学的リスクの増加に伴うエネルギー不足の問題や賃金上昇による影響で、通販事業は今後も物流コストが重しになるのが明白です。

 

アマゾンが成長を続けるためには新たな事業投資が必要不可欠で、短期的には配当や決算上の利益をよく見せて株主へ利益還元するより、事業投資を優先したかったのでしょう。
株式の報酬による魅力が薄まれば、当然従業員からは不満が出ます。

 

こうした背景を理由に、株式の報酬で基本給を抑える方針を大幅に転換させました。

 

事務職と技術職が対象

年収上限の引き上げは事務職と技術職が対象です。

 

コロナ禍からの経済再開で優秀な人員確保が急務になったことを受けての対応で、基本給の低さを理由に幹部の離職が増えていたことを一部のメディアが報じていました。

 

今回の賃金改定は上限を高めたものであり、初任給や最低賃金に対するものではありません。

 

一気に2.2倍も年収上限を引き上げたのは、優秀な幹部の流出に歯止めをかけることと、優秀な人材確保へ向けて話題性を作る2つの目的があったのでしょう。

 

対象の職種を限定した幹部および幹部候補を対象にした賃金改定ですが、世界中で賃上げの動きが加速していて、近い将来には他の業種でも何らかの賃金引き上げを打ち出す可能性があります。

 

梱包と配送も好待遇

配送する人の様子

 

2021年の年末商戦では米国内で梱包や配送業務に携わる従業員に対し、最低賃金を平均18ドルにして最大3,000ドルの入社一時金を用意しました。

 

人手不足の解消(人員確保・人材の定着)へ向けて積極的な取り組みをしているのは全ての職種に共通していることです。

 

事務職や技術職に対しては上限を引き上げて将来性の高さをアピールし、梱包や配送スタッフは最低賃金の引き上げと入社一時金で魅力を高めています。

 

いずれも人材確保が米Amazonの狙いで、従来比2.2倍の年収上限や3,000ドルの入社一時金などインパクトの強い待遇で他社との差別化を図っています。

 

Amazonは急成長した背景から、日本においても「倉庫や配送の仕事がキツい」、「典型的な外資系で安定感がない」など、働くことに対して悪いイメージを持たれがちです。

 

市場全体で人手不足が深刻化する中で、米Amazonは従来の悪いイメージを払拭したい狙いがあったのでしょう。

 

年収上限や最低賃金の引き上げで待遇改善を進める動きは、日本のAmazonにも広がる可能性があります。

 

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